
不動産業に携わっていると、日々さまざまな人や会社とやり取りをすることになります。
最近では「電話よりもメール」「来店よりもWEB」といった流れが加速しており、業務の多くがデジタル化されています。
便利になった部分がある一方で、「それ、本当に効率的なのか?」と疑問を感じる場面も少なくありません。
今日は、実際に私が体験した出来事をもとに、現代の不動産業務におけるコミュニケーションについて考えてみたいと思います。
■ 申し込みまでの遠い道のり
先日、とある貸事務所をお客様に案内しました。ご案内の結果、そのお客様は「ぜひ申し込みをしたい」と前向きなご意向を示してくださいました。ここからはスムーズに進むだろう、と期待しながら元付業者に連絡をしたのですが、そこで早速つまずきました。
電話をかけると、自動音声で「〇〇の方は1番を、△△の方は2番を……」と案内が流れ、なんと8番まで続きます。途中で「これは2番だな」と判断してボタンを押すと、確かに人が出てきたのですが、「担当はその番号ではありませんので、これから申し上げる別の番号にかけ直してください」との返答。
正直、「それなら最初から物件資料に担当部署の直通番号を書いておいてくれればいいのに」と思わずにはいられませんでした。案内を受けるこちら側は、顧客の時間を預かって対応しているわけで、こうした余分なやり取りはお客様の信頼にも直結します。

■ 空メールから始まる申込用紙
ようやく担当者につながり、申込用紙を送ってほしいと依頼したところ、「これから申し上げるメールアドレスに空メールを送ってください。折り返しのメールに申込用紙を添付します」とのこと。やや回りくどい手順ですが、仕方なく従いました。
ところが、返信が届いたのは2日後。しかも「申込希望者は法人ですか、個人ですか?」という質問のみが記載されていました。そこで「個人です」と回答し、お客様の名刺の写しも添付しました。
それからまた2日。やっと届いたメールには、個人用と法人用の申込書が両方添付されていました。思わず「最初から両方送ってくれればよかったのに」と肩を落としたのは言うまでもありません。
■ 若手担当者の印象と社内体質
やり取りをする担当者は、おそらく20代と思しき若手社員。電話口の声からも、どこかマニュアル的で、スピード感もなく、どこかちぐはぐな印象を受けました。もちろん若手が悪いわけではありません。むしろ「会社としての教育方針」や「社内ルールの運用方法」が問われるべきでしょう。
この会社は上場企業であり、大手ならではのコンプライアンス体制やルールがあるのだと思います。しかし、その「ルール遵守」が過剰に優先されるあまり、実務上のスピードや柔軟な対応が犠牲になっているように感じられました。今後トラブルが起きたときには、「社内ルールなので仕方ありません」と突っぱねられそうな予感すらしてしまいます。
■ 電話か、メールか、それともWEBか
ここで考えたいのは、「電話で済むことを、なぜメールやWEBで処理するのか」という点です。デジタル化が進み、効率的なツールが導入されるのは悪いことではありません。むしろ正しく運用されれば、業務は大幅にスピードアップするはずです。
しかし、今回のように「メールを送ったのに返信が2日後」「必要書類が揃うまでに4日以上」などといった状況になると、本来の効率化どころか逆効果です。顧客にとっても仲介業者にとっても、時間的なロスが大きく、満足度は下がってしまいます。
昔ながらの「電話一本ですぐ解決」という方法が、場合によっては今なお最も合理的であることも多いのです。
■ 世代の違いか、時代の流れか
「ゆとり世代だから」「最近の若い人はスピード感がない」と片付けてしまうのは簡単です。確かに世代間での仕事観や優先順位の違いはあるかもしれません。しかし、本質的な問題は「会社がどういう方針で顧客対応をしているか」にあるように思えます。
若い社員であっても、会社が「顧客の時間を大切にする文化」を育んでいれば、柔軟かつ迅速に対応できるはずです。逆に、いくらベテラン社員であっても、過剰に形式ばった手続きに縛られていては、結果的に顧客満足を損ねることになるでしょう。
■ 不動産業務における信頼のカギ
不動産仲介業は、顧客の信頼を基盤とする仕事です。物件の良し悪しだけでなく、仲介業者の対応スピードや柔軟性が成約に大きく影響します。だからこそ、デジタルツールの導入そのものよりも、「どう運用するか」が何より重要です。
今回の経験から改めて感じたのは、「電話一本の重み」です。顧客の不安をその場で解消し、即座に次のステップへと進められるコミュニケーション手段の価値を、私たちはもう一度見直す必要があるのではないでしょうか。
■ おわりに
世の中は確かにデジタル化に進んでいます。WEB申込や電子契約も、今後ますます当たり前になるでしょう。しかしそれは「人の手間を省き、スピードを上げる」ためであるべきで、「顧客を待たせる言い訳」や「複雑な操作を強いる」ことになってはいけません。
先日も、「電子契約で何度も同じ操作をさせられた」とお客様から苦情がり、困ったことがありました。
便利なツールに振り回されるのではなく、顧客の信頼を得るためにどう使いこなすか──。不動産業界に携わる私たちが常に考えるべきテーマだと思います。
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