
賃貸物件を契約するとき、多くの人が「とりあえず契約すれば住める」と思いがちですが、実は細かいところで損をしているケースが少なくありません。
今回は、不動産実務の現場で多くの人が見落としている「落とし穴」について、分かりやすく解説します。
1. 家賃は「前払い」が基本!「前家賃」の落とし穴
賃貸契約でまず理解しておくべきなのが、「家賃は前払い」というルールです。
つまり、たとえば4月1日から入居する場合、4月分の家賃は3月末までに支払わなければなりません。
この仕組みを知らずにいると、退去のタイミングでトラブルになります。
多くの人が「今月分はもう払ったから、退去月は支払わなくていい」と勘違いします。しかし、実際にはすでに住んだ月の家賃を払っているのではなく、これから住む分の家賃を先に払っているのです。
これにより、「退去時にもう1ヶ月分請求された」「二重に取られている気がする」と感じる方が多くいますが、これはシステムを理解していないことに原因があります。

2. 退去の連絡は「1ヶ月前」が原則!
うっかり損するタイミングとは?
次に多いトラブルが、退去の連絡時期です。契約書には必ずといっていいほど「退去の申し入れは1ヶ月前までに行うこと」と記載されています。
例えば、4月15日に退去したいと思った場合、3月15日までに退去の連絡を管理会社や大家さんにしなければなりません。これを知らずに「1週間前に言えばいいだろう」と思ってしまうと、4月15日に出ても5月14日までの家賃が請求されてしまう可能性があります。
また、1ケ月前に申し出れば退去月の家賃は日割り計算してもらえます。
特に、引っ越しのスケジュールがタイトな時期(3月~4月など)では、うっかりこの1ヶ月ルールを破ってしまい、想定外の出費になることも。これは明確に契約書に書かれている義務ですので、必ず確認しましょう。
3. 原状回復の範囲は?「汚れ=借主の負担」とは限らない
退去時の「原状回復」についても誤解が多いです。経年劣化による傷や日焼けなどは貸主の負担となりますが、借主が故意・過失でつけた傷や汚れについては借主の負担になります。
ここで問題になるのが、「どこまでが普通の使用で、どこからが過失なのか」という線引きです。
例えば、タバコのヤニ汚れ、壁に開けた穴、床のひどい汚れなどは借主負担になることが多いです。一方で、家具を置いた跡や日光で変色したカーテンレールの部分などは、経年劣化と判断されることがあります。
退去時にトラブルにならないためには、入居時の写真をしっかり撮っておくことが有効です。また、「原状回復をめぐるトラブルとガイドライン」(国土交通省)も一度目を通しておくと良いでしょう。
4. 敷金=全額返ってくるとは限らない
敷金は「預けているお金だから、退去時には全額返ってくるはず」と思い込んでいる方が少なくありません。
しかし、実際には、未払いの家賃や修繕費などが差し引かれて返金されるため、全額戻るとは限りません。特に、ペットを飼っていた場合や、室内に大きな汚れや傷があった場合は、敷金が全く返ってこないというケースもあります。
契約前に「退去時に差し引かれる可能性がある費用」について、具体的に確認しておくと安心です。
5. 管理会社とオーナー、どちらに何を言う?
意外と混乱しやすいのが、「誰に何を伝えればいいのか」という点です。
修繕やトラブル対応は基本的に管理会社が窓口となりますが、賃料の交渉や特別な契約内容についてはオーナーの判断になることがあります。
例えば、「家賃を少し安くしてほしい」といった交渉は、管理会社に伝えても即答できないことが多く、オーナーに確認が必要です。逆に、「水道が漏れている」「エアコンが壊れた」といった緊急トラブルは、管理会社に連絡すべきです。
まとめ
賃貸契約は一見シンプルに見えて、実は多くの注意点が潜んでいます。特に、今回ご紹介したような「前家賃」や「退去通知のタイミング」などは、多くの人が誤解しやすく、実務上もトラブルが頻発しています。
契約前にしっかり内容を確認し、少しでも疑問があれば質問することが大切です。信頼できる不動産会社を選ぶことも、長期的に見て非常に重要です。
また、こうした実務に即した不動産知識を発信しているキャンパスオールスリーの不動産コラムでは、他にも多くのヒントを紹介しています。ぜひ参考にしてください。
皆さまの住まい探しが、より安心・快適なものとなりますように。
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