
「無断駐車に1万円請求」は法的に可能か?
~罰金と損害賠償の違いを知る~
月極め駐車場や私有地で、「無断駐車を発見した場合、1万円を徴収します」あるいは「罰金として〇〇円を申し受けます」といった看板を見かけることがあります。
一見すると、抑止力として効果がありそうに見えますが、こうした掲示の法的な効力については慎重な理解が必要です。
まず、「罰金」という表現について確認しておきましょう。法律上、罰金とは刑法に定められた刑罰の一種であり、国家によって科されるものです。
つまり、一般の個人や会社が勝手に「罰金」と称してお金を徴収することはできません。民間で使用するには不適切な言葉であり、看板にこの文言があると、かえって法的な信頼性を損なう恐れもあります。

では、「1万円を徴収する」という記載はどうでしょうか。
これも、損害賠償の一種として解釈されます。無断で私有地に駐車されれば、土地所有者はそのことによって一定の損害を被ったと主張することができます。
たとえば、契約者がそのスペースを使えなかったことによる業務上の支障やクレーム対応、あるいは代替駐車場の費用などが具体的な損害に該当します。
しかし、重要なのは、その損害が客観的に認定できるかどうかです。単に「腹が立った」「迷惑だった」といった主観的な感情では損害とは言えません。
また、金額についても、実際に発生した損害と釣り合いがとれている必要があります。
1万円という高額な金額が、何の根拠もなく一律に設定されている場合、それは「過大な損害賠償」として否定される可能性があります(民法第420条第1項など参照)。
さらに、無断駐車した側がその場を立ち去った後に請求書を送るなどしても、相手が任意に支払う保証はありません。裁判などの手続きを経なければ、強制的に支払わせることは難しいのが現実です。そのため、実務上は警察への通報や、場合によっては弁護士を通じて内容証明を送付するなど、冷静かつ法的なアプローチが求められます。
とはいえ、看板の存在自体には一定の効果があります。「無断駐車禁止」と明記し、損害が発生した場合には法的措置を取る旨を穏やかに示しておくことで、抑止力となることは確かです。その際には「罰金」といった誤解を招く言葉は避け、「損害が発生した場合には相応の対応を取ります」といった表現に留めるのが望ましいでしょう。
無断駐車は迷惑行為であることに変わりはありませんが、感情に任せた対応ではなく、法律に則った冷静な対応姿勢が大切です。土地を守る側も法的知識を持って、正当な権利行使を目指すことが重要です。
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